第10回天上天下唯我独奇書ロスろす会開催のお知らせ

今年5月22日、アメリカ文学を代表する作家フィリップ・ロスが亡くなりました。『さようならコロンバス』で鮮烈デビューしてからの文学的業績は、青春小説あり、政治劇あり、ユダヤ系らしく自分の家族を題材にした自伝的小説もあれば奇書的なメタフィクション…

第9回天上天下唯我独奇書読書会開催のお知らせ

ハロー、<ナルシス>の住人のみなさん。わたしはジョン・バース。この<ナルシス>の創造主だ。このメッセージが届く頃、私は死んでいるだろう。 この世を去る置き土産に、『酔いどれ草の仲買人』の作品内のどこかにこの本すべての意味が理解できるイースタ…

「どこもかしこも駐車場」と風景の発見

www.youtube.com www.youtube.com 森山直太朗の最高傑作 森山直太朗はJ-POPの異端児である。時に「文学的」「難解」とされる彼の楽曲は一方で、「太陽」などを少数の例外として、「さくら」にせよ「夏の終り」にせよ「生きとし生ける物へ」にせよ「そしてイ…

インディヴィジュアル調書―大江健三郎全小説全読書会④

デビュー長編『芽むしり仔撃ち』を取り上げた第3回読書会から3か月、『大江健三郎全小説』配本を記念して、第4回「大江健三郎全小説全読書会」を開催します。今後も各回配本に合わせて実施していく予定。今回は大江にとって前期終焉を告げる一大転機とな…

非日常生活の冒険ー大江健三郎全小説全読書会③

代表作『万延元年のフットボール』を取り上げた第2回読書会から4か月、『大江健三郎全小説』配本を記念して、第3回「大江健三郎全小説全読書会」を開催します(第1回読書会での議論をレポート化したものがブログにあるのでよければ過去の記事もご覧くだ…

第8回天上天下唯我独奇書読書会開催のお知らせ

こんばんはみなさん、Nicoです。この年末、半年以上のお休みを経て奇書読書会が帰ってきます!今回読むのは、「人は奇書を読むことはできない。再読することもできない。」という本読みの胸にしみる名言を残したあの作家の、今年いよいよ翻訳された大作です…

City of Words of the Dead

序論 「僕は知るべきすべてを知っている / 僕はジョージ・ロメロからすべてを学んだんだ ダリオ・アルジェント、トム・サヴィーニ、スチュアート・ゴードン、サム・ライミからも」 ― Sprites「George Romero」 映画はその誕生時から、白と黒との境界線を主戦…

M/Gと大江のフットボールの物語-大江健三郎全小説全読書会②

大好評をいただきました第1回読書会から3か月、『大江健三郎全小説』第7巻配本(7/10)を記念して、第2回「大江健三郎全小説全読書会」を開催します(第1回読書会での議論をレポート化したものがブログにあるのでよければ過去の記事もご覧ください)。…

叫べ、叫び続けよ ー大江健三郎全小説全読書会①

7月10日に『大江健三郎全小説』が第3巻から配本開始されるという歴史的事件を記念して、「大江健三郎全小説全読書会」を立ち上げます。今後も各回配本に合わせて実施していく予定。大江ファン集まれ!日時: 2017年7月16日(日) 14:00~ 場所: 名曲・珈琲「ら…

新作小説時評 (2)

山田詠美の新作「ベッドタイムアイズ」は、肌の柔らかさと金属の硬さが共存し、時に不協和をきたすありようを描いている。語り手キムは黒人兵が「黒い指の間にはちみつがしたたり落ちるかのように金色」(p.11)のグラスを持っている所を見て欲情を抱き、黒人…

第7回天上天下唯我独奇書読書会開催のお知らせ

がたん! ーという一つの運命的な衝動を私たちに伝えて、その読書会の告知は開始した。 えんたあ・えんたあ! へんかん・しふと・F6! えんたあ・えんたあ・えんたあ! ふたたびタイトル。 「第7回天上天下唯我独奇書読書会―。」 こんばんは、Nicoです。今…

新作小説時評(1)

四次元的小説ー『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治の新作『銀河鉄道の夜』は、三次元の現実を超えて行こうとする小説の力を感じる作品だった。冒頭の教室の場面で、ジョバンニの先生は星座の図の「ぼんやりと白いもの」について次のように生徒達に語る。 「ですから…

僕たちの失敗―『高校教師』論

生物準備室、昼休み。結婚生活の難しさを自嘲的に語った新庄徹(赤井秀和)に、羽村隆夫(真田広之)が生物学の知識で応じる些細な場面がある(『高校教師』第3話「同性愛」)。 羽村「知ってますか?カマキリの共食いの話。」 新庄「ああ、あの雌が雄食う…

第6回天上天下唯我独奇書読書会開催のお知らせ

Happy Barthday!! ある意味では、僕、Nicoです。ボブ・ディランが「行けたら行く」と言ってノーベル文学賞を受賞したのを知ってる人も、実はその前にジョン・バースが「もらえるならもらう」と言って必死に賞もらおうとしてたことは知らないのでは?今年20…

総括2016年の文化(後編・上)

ここで今年日本で作られたテレビドラマに目を向けることにしよう。結論を先取りして言うなら、さまざまなジャンルが花開いているように見えるドラマ界は、市場社会におけるアイデンティティーの強調という傾向にますます収斂している。 『ゆとりですがなにか…

総括2016年の文化(中編)

2016年の夏はポケモンGOとリオオリンピックの夏でもあった。7月22日に日本でサービス開始されたポケモンGOは、スマートフォンの中の日常の風景に違和感なくポケモンを溶け込ませポケモン世代を熱狂させた。約1ヶ月後、8月21日のリオ五輪閉会…

総括2016年の文化(前編)

都市に対する郊外の、ホワイトカラーに対するブルーカラーの勝利―世界史的には、イギリスEU脱退(6月)とドナルド・トランプ合衆国大統領誕生(11月)を決定して先進国内部の格差を浮き彫りにした2つの選挙で記憶されるだろう今年は、日本にとってはど…

第5回天上天下唯我独奇書読書会開催のお知らせ

< etml:lang=ja > < README > まず、わたしの企画から説明せねばなるまい。 必要なのは、何をおいてもまず、奇書だ。 こんばんは、Nicoです。次回奇書読書会は第2シーズン1周年のアニバーサリー会となります。内容も、第4回『薔薇の名前』で出てきたホー…

第4回天上天下唯我独奇書読書会のお知らせ

奇書だ、当然のことながら。 全国4000万の奇書ファンのみなさま、こんばんは、Nicoです。来る土曜日、先日亡くなった奇書作家を追悼する意味も込め、いよいよ「あの」本を取り上げて奇書読書会を行うこととなりました。深夜課の真っただ中ですがしばし告…

匣はもう開いている ―『匣の中の失楽』論

【本稿には、『匣の中の失楽』の真相に触れた記述があります!未読の方は読了後お読み下さい。ページ数は講談社文庫『新装版 匣の中の失楽』に基づきます。】 言語哲学者ジョン・サールに「中国語の部屋」と題する奇妙な思考実験がある。人工知能を人間と見…

B級映画は君に語りかける(2)-『激突!』

『激突!』と人間の条件 「僕ら二人で、どこへともなく乗っていく / 誰かが必死に稼いだ金を使いながら」 ― The Beatles, “Two of us” 「ディーンは路上(ロード)の人間だった」 ― Jack Kerouac, On The Road 『激突!(Duel)』はドライブ中に巨大なトレー…

第3回天上天下唯我独奇書読書会開催のお知らせ

第3回天上天下唯我独奇書読書会開催のお知らせ こんばんはNicoです。日曜昼、東京は本郷で第3回奇書会を開くことをここにお知らせします。第1回『匣の中の失楽』、第2回『アラビアの夜の種族』に継ぐ第三奇書は、これ(ら)だ!! 第3回天上天下唯我独…

「瞑想&独走」

瞑想(メイソウ) & 独走(ディクソウ) ―ビッチンガー牧師日本遠征私記 「これを見ると一層あの時代が、―あの江戸とも東京ともつかない、夜と晝とを一つにしたやうな時代が、ありありと眼の前に浮んで来るやうじやありませんか。」(芥川龍之介「開化の良人」…

『匣』再読のしおり(続き)

<四章>(※真沼は失踪、雛子両親死亡) 1 ナイルズ・ホランド・曳間・根戸・羽仁・布瀬・影山@新宿御苑 8/16(木) 『密』三章まで朗読される(700枚以上) 2 甲斐・曳間@甲斐の部屋 甲斐、死体となった杏子の油絵を描いている。『密』の意図をめぐって …

『匣』再読のしおり

竹本健治『匣の中の失楽』(1978)内容整理 * 重大なネタバレを含みます!読了後にお読みください!! * 人物は原則として各場面登場順に記載、時刻は24時間制に変換して表記しています。 <序章> 1 曳間の独白 不連続線 2 根戸・真沼 既視感 3 倉野・…

第1回天上天下唯我独奇書読書会のお知らせ

みなさま Nicoです。今年も残り数時間ですがいかがお過ごしでしょうか?よるべなき人形としての生の中、濃霧に不連続線を探すため、来たる1月9日宵刻、奇書読書会を開催致します。 日時:2016年1月9日(土)19:00~ 場所:東京都文京区本郷通り沿い CafeLo…

『明暗』&『暗夜行路』論

偶然と運命のキアロスクーロ 『明暗』と『暗夜行路』、近代日本文学を代表する二つの大作の微妙な関係は、ある程度漱石と志賀の関係の微妙さを反映している。『暗夜行路』完結後の「あとがき」を志賀は、自分が連載するはずの長篇が思うように書けず漱石に詫…

『それから』論

それからの近代小説 漱石作品の中で『それから』は際立って人工的な印象を与える。そこでは小説の構成など八方破れでも良いと言わぬばかりの闊達さは陰をひそめ、プロットは因習的な「姦通小説」をなぞり再生産するにとどまっている。(『虞美人草』はどうか…

『或る女』論

文壇に於ける白樺主義の代表者「タケロヲ、アリシマ」の小説について 革命主義を政治上に實行せんと企てたるは士人なり之を文學上に発揮したるは詩人なり「シヨウヨー」を読む者は通観一過してその言文一致論にかぶれたるを知るべし「シメー」の如きは多言を…

B級映画は君に語りかける(0)

人は映画を見て、まれにその歴史を考えたりする。『カサブランカ』を見た後に『ショーシャンクの空に』を見てどちらが心に響くか考える。『ニューシネマパラダイス』を見た後に『勝手にしやがれ』を借りてトルナトーレは泣けるがゴダールはうんぬん、とひと…