2015-12-06から1日間の記事一覧

『明暗』&『暗夜行路』論

偶然と運命のキアロスクーロ 『明暗』と『暗夜行路』、近代日本文学を代表する二つの大作の微妙な関係は、ある程度漱石と志賀の関係の微妙さを反映している。『暗夜行路』完結後の「あとがき」を志賀は、自分が連載するはずの長篇が思うように書けず漱石に詫…

『それから』論

それからの近代小説 漱石作品の中で『それから』は際立って人工的な印象を与える。そこでは小説の構成など八方破れでも良いと言わぬばかりの闊達さは陰をひそめ、プロットは因習的な「姦通小説」をなぞり再生産するにとどまっている。(『虞美人草』はどうか…

『或る女』論

文壇に於ける白樺主義の代表者「タケロヲ、アリシマ」の小説について 革命主義を政治上に實行せんと企てたるは士人なり之を文學上に発揮したるは詩人なり「シヨウヨー」を読む者は通観一過してその言文一致論にかぶれたるを知るべし「シメー」の如きは多言を…