第7回天上天下唯我独奇書読書会開催のお知らせ

 がたん!

ーという一つの運命的な衝動を私たちに伝えて、その読書会の告知は開始した。

 

 えんたあ・えんたあ!

 へんかん・しふと・F6!

 えんたあ・えんたあ・えんたあ!

 

ふたたびタイトル。

「第7回天上天下唯我独奇書読書会―。」

 

 こんばんは、Nicoです。今回は昭和モダニズムの香りも高く、北海道は函館中学校で運命的にも先輩・後輩の関係だった2人の文章の魔術師を取り上げます。

 

日時:2017年5月5日(金・祝)14:00~17:00

場所:新宿「らんぶる」地下席

課題奇書:谷譲次『踊る地平線』(上・下)(岩波文庫 発表1929年)

     久生十蘭『魔都』(創元推理文庫、4/21発売予定 発表1938年)

 

 谷譲次林不忘の名義で時代劇史上に残るヒーロー丹下左膳を創造し、牧逸馬の名義では怪奇実話で世を震撼させた多才の人。『踊る地平線』はアメリカ体験記「めりけんじゃっぷ」物で知られていた譲次が天衣無縫な文体で描いたヨーロッパ旅行記で、織田裕二主演のあのドラマにも影響を与えていること間違いなし!「事件は旅行先で起きてるんだ!」

 その後輩久生十蘭は、「作家にとっての作家」と呼ぶにふさわしい技巧的な名文家です。かつて奇書読書会で取り上げた中井英夫が偏愛したことで知られ、『虚無への供物』の探偵役・奈々村久生のネーミングの由来ともなりました。特に『魔都』は昭和九年大晦日~翌昭和十年元旦の帝都東京に巻き起こる怪事件をタイムリミットサスペンスで描いた十蘭の最高傑作で、ほぼレインボーブリッジを封鎖せよ!です。今回、『新青年』連載時の初出から装いも新たにもうすぐ文庫化されるということで、創元推理文庫版を指定させていただきました。(すでに出版されている、奇書ファン御用達のレーベル『日本探偵小説全集8 久生十蘭集』にも『魔都』は収録されているので、そちらを読んで来ていただいてもかまいません。←※3/30追記: これは大ウソでしたごめんなさい!(笑) 『久生十蘭集』には「湖畔」「ハムレット」「顎十郎捕物帖」など代表作が収録されてますが『魔都』はなし。朝日文芸文庫版『魔都 久生十蘭コレクション』をお探しくださいm(__)m)


 今回はぜひみんなでこの2人をいっしょに読みたい!と思ったので2作品になってしまいました。時間の取れない方はどちらかを読了していただければ楽しめる会にしたいと思います。でもでも、「いやいやヒマでしょうがない、もっと奇書読ませてよNicoちゃん!」という方は、ぜひ島田荘司『水晶のピラミッド』を読んでみてください。「魔都」という章があったり、本筋と何の関係もない怪奇実話が語られたり、この2人へのリスペクトがそこかしこに…そして古代エジプトに絡む壮大なミステリーなのにトリックが机上の空論でむちゃくちゃ…なのはそれもそのはず、島田荘司は『牧逸馬の世界怪奇実話』というアンソロジーも編集してるぐらい谷譲次好きなんです。つながった、ぱちぱち。

 

 今回のお題は、「なぜ2人はこの内容を・この文体で書いたのか?」にします。谷譲次には横光利一新感覚派モダニズムが、久生十蘭には坪内逍遥二葉亭四迷経由の江戸戯作的な文体が影を落としているように感じるのは僕だけでしょうか。アメリカや中国大陸をめぐる文化的・政治的情勢なども読み取れそうな気もします。

 奇書読書会に初めて参加してみようという方は@bachelor_keatonまでTwitterでご連絡ください。

 では、当日お目にかかれますことを楽しみにしております。ゴールデンウィークの安逸をむさぼる帝都をBUMP!で染めましょう!!! 

 

 Nico


【追記・参考文献目録(随時更新)】

前田愛前田愛著作集』2~5、特に「SHANGHAI1925 都市小説としての『上海』」(『都市空間の中の文学』所収)

松山巌『乱歩と東京』『群衆』

大石雅彦『「新青年」の共和国』

室謙二『踊る地平線  めりけんじゃっぷ長谷川海太郎伝』

川崎賢子『彼等の昭和』

海野弘久生十蘭  『魔都』『十字街』解読

早稲田文学』1983年11月号「久生十蘭特集」、特に川崎賢子「『魔都』ー「大都会の時間外」のエネルギー」

ユリイカ』1987年9月号「特集: 『新青年』とその作家たち」、特に森常治「フロットサム・カルチャー・わんだーらんど

ユリイカ』1989年6月号 「特集: 久生十蘭  文体のダンディズム」、特に永瀬唯「公園の腸 『魔都』地下迷宮を読み解く」

渡部直己『日本小説技術史』